平成24年2月20日(月)著


  母国において上場申請されたfacebookの登録利用者がSNS後進国である日本において

  増加している中、危惧している点が幾つかある。


  その中のひとつが、「ストーカー」(stalkをする人)との関係である。

 

  わが国の「ストーカー行為等の規制等に関する法律」における

 「ストーカー」とは、

         同一の者に対し、つきまとい等(略)を反復してすること

         をいう。

 「つきまとい等」とは、

         特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情又はそれが満

         たされなか
ったことに対する怨恨の感情を充足する目的で、

         (略)、次の各号のいずれ
かに掲げる行為をすることをいう。


 ちなみに、


 カルフォルニア州のストーキング防止法では、以下のように規定されているようです。


          「計画的に、故意に、反復して、他人をつけ回し、嫌がらせを行う行為」


 

 ストーカータイプには、一方向型、破局型、破婚型等いくつかあるが、


 SNSとの関係で気になるのが一方向型、つまり、一方的に対象を定め、その後、あらゆ 

 る情報の入手に偏執しストーキングをするケースである。


 以前は、このタイプの情報収集手段は、被害者の住居周辺を俳諧し、ゴミ袋等からの私

 書や日記、使用後の生活用品等の蒐集といった目に見える形が主であったと思われる。

 

 しかし、facebook等のSNSの登場により、その蒐集が格段に容易になったといえるので

 はないか。


 なぜならば、facebook上では、ある個人を特定するのに有用な「写真」「勤務先」「住

 居地」「学歴」「メールアドレス」が公開(人にもよるが)表示され、更には、ウォー

 ル(公開している場合)を閲覧すれば、その日、又は、将来の特定の日における対象と

 する被害者の居場所及び時間帯までもが記されており、人差し指のみで蒐集可能な状況 

 が作出されているからである。

 

 もっとも、1999年にメディアが連日取り上げたストーカーから発生し殺人にまで至

 った埼玉県桶川ストーカー殺人事件を機に、法整備が進められ、2000年5月18日

 に同法律が成立し、その後、2002年には、

 

        「 犯罪被害防止等即時対応システム 」

 

 がスタートし、被害にあっている本人了解のもと、予め「氏名」「住所」「電話番号」

 を警視庁のコンピューターに登録しておけば、例えば、「つきまとい」をされている状

 況下において、その登録した電話番号で110番通報すれば、パトカー等へ「現場への

 急行」が指示されるという対応が整備されており、万が一、被害者になったとしても、

 国家の助力にある程度期待できる状況になってきているとはいえる。

 



 とはいえ、昨今では、「人の優しさ」というものに対する受け取り方が著しく変化して

 きてしまっているといえる。


 つまり、2年前にメディアで取り上げられた熊本県での80代の男性による20代の女

 性に対するストーカー事件が象徴的であろう。女性からの優しさからその女性に対して

 恋愛感情を抱き、その男性がその女性に対してストーカー行為を繰り返し、ストーカー

 規制法違反容疑で 書類送検されたという事件(懲役5ヵ月、執行猶予3年確定)があ

 った。

 



 このことからも、特に注意を呼びかけたいのは、10代から20代の若者、特に独身の

 女性である。


 相手からの優しさを自己に対する好意等と即断誤信してしまう男性にとっては、


 SNSの普及により、


 以前であれば一度の集まりで知り合っただけでは、その場で連絡先等の交換をしなけれ

 ば、その後、再び出会う機会に遭遇するか、気になった相手の友人等が身近にいるとい

 った特段の事情がない限りは、そのふれた優しさを自己に対する好意等であると誤信し

 ても、よほどの執着心を有していない限り、相手に対してアクションを起こすことは事

 実上不可能であったと思われるが、


 その相手女性がいずれかのSNSに登録をしていれば、前述のように「居住地」「勤務先」

 等から相手方の行動範囲を把握することが可能であるということである。そして、特定

 のタイプの者は、この入手した情報をもとに、ストーキングをする蓋然性があるという

 ことである。

 


 ストーカー行為等の規制等に関する法律の法定刑の上限が「1年以下の懲役又は100

 万円以下の罰金」であるということからも、加害者に対する抑止力としては十分とはい

 えず、再犯の可能性が低いとはいえず、このことからも、被害者にならぬための未然防

 止策が必要であると思われる。

 

 私見・望みとしては、


 彼女がSNSを利用している彼氏は、その情報の公開範囲を確認し、必要以上に、人物を

 特定 ( 明瞭すぎる「写真」 )でき、行動範囲の把握可能な情報( 「居住地」

 「最寄駅」「勤務先」「学歴」等 )を「一般公開」等といった「不特定多数者」や 

 「特定多数の利用者」が閲覧可能なプライバシー設定にしている場合には、彼女に対し

 てその「公開」範囲の制限の検討を促してほしい。


 女性同士であったとしても、親しい友人等に同じくこの制限の検討を促してほしい。

 



 昨今のメディアが取り上げているように、ストーカー行為は、年を追うごとに認知件数

 は増加し、悪質化・凶悪化している現状からも、ひとたび其の被害者になれば、ケース

 にもよるが、一生そのことに怯えながら日常生活を営まなければならないという立場に

 おとしめられるおそれがある以上、そして、その被害者の約90%が女性であることか

 らも、心を包む相手のことを一番大切に思う美しい気持ちが加害者に対する憎悪に支配

 されないためにも、また、世界経済の景気の牽引役となるであろうSNS関連ビジネスが

 将来にわたり社会貢献を果たすツールとして確立するためにも、利用者である彼女のSN

 Sの利用状況を把握し、決して被害者とならぬよう、協力し合って適切な措置を講じてほ 

 しいと切望する次第である。

 



 人と人との輪を広げていくことは、大切であり、すばらしいことである。

 



 昨今の混沌とした社会情勢の下においては、より多様な価値観と価値観との融合、時に

 は拮抗させながらも、総人口約70億人のより多くの人たちが納得のいく社会生活を営

 める精神的物質的持続可能性が担保された社会構造を構築する上で、SNSを利用した人


 的交流は必要不可欠な要素であると思われる。

 



 しかし、その際、常に、相手の気持ちを慮れる良識ある者だけがSNSに参加しているわ

 けではないということを再認識していただきたい。

 


 良識ある利用者が可及的に不要な不快感や嫌悪感を抱かれることがないよう、御自身の

 ソーシャルネットワークスタイルに合致した防衛手段を確立させていただきたいと願う

 次第である。


 

                                Kenichi yoneda                     


Stalker