2012年7月8日著


 

今週、警察庁から以下の発表があった。



<以下、読売新聞7月5日配信記事より引用(著作権法32条1項)>



『ストーカー過去最多上回るペース…警告は7割増



読売新聞 7月5日(木)15時40分配信



全国の警察が今年1~5月に把握したストーカー事案が、


前年同期より2069件多い7841件に上ったことが5日、警察庁のまとめでわかった。



過去最多となった一昨年を上回るペース。昨年12月に女性2人が犠牲になった

長崎県西海市
のストーカー殺人事件を機に相談が増えた上、警察も被害届を積極的

に受理したことが影響し
たとみられる。




都道府県別の認知件数では、同事件の主な舞台となった千葉県(404件)と長崎県

(90件)
で倍増するなど、40都道府県で前年同期を上回った。



ストーカー規制法に基づく容疑者への警告は7割増の839件で、これに従わずつきま

といや
無言電話を続けた者への禁止命令も23件あった。同法違反容疑での摘発は

37%増の130
件で、暴行や脅迫など同法以外での立件も84%増の599件となった


ストーカー大量メール、規制外…被害者の重圧に


                     読売新聞 7月5日(木)17時27分配信



全国の警察が今年1~5月に把握したストーカー事案が、前年同期より2069件多い7841件


に上ったことが5日、警察庁のまとめでわかった。


過去最多となった一昨年を上回るペース。


年々増えるストーカー事案では、対応の遅れが悲惨な結果を招くケースが後を絶たない。


警察庁では積極的な事件化を都道府県警に指示する一方、2000年11月の施行以降、


一度も改正されていないストーカー規制法に問題点がないか、捜査現場からの聞き取りを始め
た。


「苦しくて悔しい」「電話して」――。


兵庫県の男性(52)の携帯電話には昨年8月頃、元交際相手の女(45)から連日、


メールが届くようになった。


だが、メールの大量送信は同法の規制対象外。


メールは100通近く続いたが、県警は口頭注意しかできなかった。


男性は「家に押しかけられるのでは」と不安を訴え続けたが、


女を同法違反容疑で逮捕できたのは、


男性の携帯電話に連続で電話したことが確認された昨年12月になってからだった。


同法は「交際や面会の強要」や、繰り返しの電話、ファクスなどを禁じているが、


メールによるつきまといは想定していない。実際の事件では、たわいのない内容や、


何も書かれていない「空メール」が大量に送りつけられるケースは多く、


被害者の重圧となっている。                          』



          <以上、読売新聞7月5日配信記事より引用(著作権法32条1項)>






  <ストーカー行為等の規制等に関する法律 2条1項5号>



    電話をかけたのに何も告げず、

   又は

    拒まれたにもかかわらず


       
電話をかけ
   
      若しくは
  
       
ファクシミリ装置を用いてファックスをすること



  <配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律10条2項4号>


    前項本文に規定する場合において、同項第一号の規定による命令を発する裁判所


    又は発した裁判所は、


    被害者の申立てにより、


    その生命又は身体に危害が加えられることを防止するため、


    当該配偶者に対し、


    命令の効力が生じた日以後、


    同号の規定による命令の効力が生じた日から起算して六月を経過する日までの間、


    被害者に対して


    次の各号に掲げるいずれの行為もしてはならないことを命ずるものとする。



     一 面会を要求すること。


     二  その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、

        又はその知り得る状態に置くこ

     三  著しく粗野又は乱暴な言動をすること。


     四   電話をかけて何も告げず、

       又は

        緊急やむを得ない場合を除き、


        連続して、

          
電話をかけ、

          
ファクシミリ装置を用いて送信し、

         若しくは

          
電子メールを送信すること。


五                  ・

                  ・

                  ・



双方の条項号を一読され両者を比較して戴ければお分かり頂けるように


ストーカー規制法には「電子メール」の文言がなく、DV防止法にはあるということ

である。


これはすなわち、加害者から大量の電子メール(内容については後述)が送信され


た場合、
加害者と被害者とが、婚姻関係、内縁関係、婚姻関係を解消した一定の要件

を満たす男女であれ
ば、捜査機関はその確認の有無の後、一定の法的措置を講じる

ことが可能となる。



しかし、加害者と被害者とが上記の関係にない場合には、上記事で述べられている通

り、
DV防止法の適用はなく、よって、大量の電子メールの送信の事実が確認できたと

しても、
捜査機関はこれのみでは警告等の法的措置に踏み込むことができない。





だだ、ここで注意して戴きたいことが一点ある。


それは、大量の電子メールの送信行為のすべてがストーカー規制法の適用対象外に

あるというわ
けではないということである。



つまり、個々の送信されてきた電子メールの内容によっては、ストーカー規制法の適用

対象とな
り、警告や禁止命令、告訴手続きを踏むなど捜査機関のそれなりの助力を得

られるということで
ある。




では、

ストーカー規制法による保護を受けられる電子メールの内容とは、

具体的にいかなる内容か。





ストーカー行為等の規制等に関する法律2条1項各号のそれぞれについて検討していく。



まず、

  1号 「 つきまとい、待ち伏せし、進路に立ちふさがり、住居、勤務先、学校その他

      その通常所在する
場所(以下「住居等」という。)の付近において見張り

      をし、又は、住居等に押し掛けること。  」  
 



1号の構成要件に該当する行為について、電子メールを手段とする行為は考えにくいであろう。




次に、

  2号「 その行動を監視していると思わせるような事項を告げ、又はその知り得る

     状態に置くこと。  」



2号の構成要件に該当する行為についてみると、


その行為は、「告げる」行為又は「知り得る状態におく」行為である。


ここで、送信した電子メールの内容が次の内容である場合には、


同条項号の構成要件に該当することになる。



  「おかえり。

   今日も、残業遅くまで大変だったね。コンビニ弁当ばかりだと体によくないよ。」



  「今日は彼女とドライブデートだったんだね。彼女の手作り弁当おいしかった?

     でも私の手料理はもっとおいしいよ。」



これらの内容を含む電子メールを相手方に送信し相手方の受信箱(特定サーバー)に


記録(アップロード)する行為は「知り得る状態におく」行為にあたる。



次に、

  3号「 面会、交際その他の義務のないことを行うことを要求すること。  」




3号の構成要件に該当する行為について、その手段は限定されておらず、


口頭・対面・電話、手紙・電子メール等を問わない。


よって、電子メールの内容が以下の内容等である場合には、


「義務のないことを行うことを要求する」行為にあたることになる。




    「俺(私)と付き合ってほしい」




    「〇月△日にプレゼントを贈るから是非受け取ってほしい。」




次に、
    
4号「 著しく粗野又は乱暴な言動をすること。 」



4号が予定していいる構成要件該当行為は「言動」又は「動作」であることから

電子メールの送信行為は予定されていないといえる。




   5号「 電話をかけて何も告げず、又は拒まれたにもかかわらず、


      連続して、電話をかけ若しくはファクシミリ装置を用いて送信すること。」


5号については省略する。



次に、

   6号「 汚物、動物の死体その他の著しく不快又は嫌悪の情を催させるような物

      を送付し、
又はその知り得る状態に置くこと。



6号が予定している構成要件該当行為は「物」を「送付」する行為等である。

この点、電子メールにより「物」を送信することは物理的に不可能である。

よって、電子メールの送信行為が同条項号にあたることはない。



次に、

  7号「その名誉を害する事項を告げ、又はその知り得る状態に置くこと。」



7号が予定している構成要件に該当する行為は相手の「名誉を害する事項」を「告げる」行為


又は「知り得る状態におく」行為である。


刑法230条第1項と231条と異なり「公然性」が要求されていない。


よって、送信された電子メールの内容が以下の内容等である場合には、


その電子メールの送信行為は同条項号にあたる。


次に、

   8号「その性的羞恥心を害する事項を告げ若しくはその知り得る状態に置き、

      
又はその性的羞恥心を害する文書、図画その他の物を送付し若しくは

      その知り得る状態に置く
こと。   」



8号が予定している構成要件に該当する行為は「性的羞恥心を害する事項」を

「告げる」行為
または「知り得る状態に置く」行為であることから、

7号と同様、送信される電子メールの内
容が「性的羞恥心が害される」内容であれば、

同条項号にあたることになろう。



以上からすれば、


電子メールの内容がある程度、特定され具体的であり、一般人を基準とした場合、つまり、


受信者の殆どに「不安を覚えさせる」内容である場合には、ストーカー規制法により

カバーさ
れているといえる。


問題なのは、その内容が具体的でない内容である場合ということになる。



つまり、上記事でも列挙されてある



     「     」(空メール)


     「おはよう」


     「おやすみ」


     「恋しい」


     「寂しい」


(上記事中にある「電話して」についてであるが、この内容のメール送信行為は



 3号「義務のないことを行うことを要求すること」に当たると思われる。)



これらは、前掲の 2号、 3号、 7号、 8号のいずれにも該当しない。



よって、現時点では、DV防止法との関係でみれば、ストーカー規制法2条1項5号の修正案


(「~拒まれたにもかかわらず、連続して~、電子メールを送信すること。」)を国会に提出、


可決という立法手続の早期実現を望まざるをえないことになろう。



施行後12年経過しているにもかかわらず、また、附則4に


「付則4(検討)


ストーカー行為等についての規制、その相手方に対する援助等に関する制度については、


この法律の施行後5年を目途として、この法律の施行の状況を勘案して検討が加えられ、


その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるべきものとする。」


と謳われていることから、この放置(不作為)は、法的に違法とは断定しきれないにしても、


不当な状態に至っていると評価しうる余地はあるといえるのではないであろうか。



凄惨な事件が発生し、尊い命が奪われたことを契機としてのみ、社会全体の意識が変化

しうると
いう由々しき事態を憂うべきではあるものの、ここにきてストーカー事犯の認知

件数が増加した
ということは、初期段階におけるストーカー行為の法益侵害性の軽微さ

故の希薄な被害者意識か
らの脱却、つまり、その助長いかによっては凶悪・暴挙化する恐

れのある行為であるとの高い危
機認識が一般化されてきたということであろう。



ストーカー事犯の大半は男女間に生じる、特にその一方の「我欲」や「心の隙間」の不合

理な手段
による充足を動機とするケースにおいて、加害者本人の意識変革が期待でき

ないケースが少なくな
い以上、法的サンクションを付与することで当該行為によっては

実現不可能であることを加害者本
人に早期に認識させる必要があろう、加害者を悔悟

不能な状況に追い込んでしまわぬためにも・・
   法改正の早期実現の望む。






~ 弊職の独り言 ~



先週は「謙虚さ」についての私見を記させてもらった。


これに加えて、もう一つ人間関係を形成していくなかで気になっていることがある。

(先週、最後に突如明記した不正競争防止法にも関わることである。詳細は避けるが。)


これは世代を問わず、どちらかといえば、個々人のイントリンシックバリュー観に


依拠する態度の1つといえるであろう




仕事の上においても、プライベートにおいてであろうと、


相手に対して、「挑戦する」という意味合いを込めて礼節を逸脱した態度に出られる

ことは、
稀にあるであろう。無いに越したことはないのではあるが・・。



ここでいう「挑戦」とは、価値観の拮抗状態を顕在化させ一定の結論を得ることを

欲する態度
である。



ここまでの態度は真理探究に資する側面が認められるという限りにおいて一定の評価を加える

ことができるであろう。


この場合、ケースによってはそのことが功を奏することもあれば、

逆に破談・決裂・破壊等の
一途をたどることもある。




問題としているのは、その後の態度、


特に、破壊・決裂等好転の契機とならなかった後の態度である。




目的や理由がどうであれ、許容範囲を明らかに超えた態度、


つまり、相手の信頼を踏みにじる、人格そのものを否定する言動・所為に出られた以上、



「のどもとすぎれば熱さ忘れる。」



「時が経てば、いつしか風化されるものであろう・・」



「もう何年も前のことであるし、水に流してもらえているのでは・・」




これらすべては、極めて「傲岸不遜」な態度と言わざるをえない。


時の経過と共にその記憶が少なくとも日常の意識のレベルで希薄化しかけた頃、


又は、忘却しきった後において、突如、何事もなかったかのように近況報告に名を借りて

連絡をしてくるケースがあろう。




弊職が見聞した限りで申し上げれば、

この行動に出る側は十中八九落ち度のあった側である。


当たり前のことといえば当たり前のことであろう。




覚悟を以てやるだけのことをやったとの自負があれば、それに不可避的に責任感が

伴うわけあり、
この事態に対する客観的評価・相手側からの要求を待つことに終始す

ること以外に方策は思いつ
かないはずなのではないであろうか。




この極めて不遜な態度をもって「良し」という風潮が恒常化した場合、


社会全体におけるコンプライアンス意識は確実に弛緩の一途を辿ることになろう。




弊職は、モラルハザードの根源の1つはこの態度を助長する企業体質にあると現時点

では捉えて
いる。





たとえ、理由がどうであれ、そして、いかなる年月が経過しようとも、


金銭をもって慰謝することが到底不可能な相手の人格や信頼を土足で踏みにじる

言動・所為に
対して許容する寛容さを備えることにいかほどの価値があるのであろうか。




ただ、次世代の若人達に弊職の考えを申し述べさせていただくと、


このような稀なケースを経験してしまった場合、特に、落ち度のある側に立たれてしまっ

た場合、
ケースや程度にもよろうが、相手から何らかのアクションやサンクションが無い

限りは、
無理にその修復に時間と労力を注ごうとするのではなく、


その後到来する可能性のある類似の事態において、同じ轍を踏まぬことに尽力されるべ

きであろう。





弊職のクレドゥの1つを記させていただくと、


仕事の上で生じた場合、

信頼関係の回復可能性は限りなくゼロに近く肯定されることは稀である。


プライベートにおいて生じた場合、人間関係の形成自体が回復することは皆無である。



  ひと昔前の「がんこ者の先人」達から受けたその態度に触れ、そして

  体得させて頂いた弊職にとっては生涯手放すことのできない貴重な術である。



    先人曰く、「覚悟をもって事にあたれ。」ということであろう。


 

 

                                              Kenichi yoneda

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       

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