Stalker




 2012年3月18日著

 先週半ば、
 「海越えたストーカー…米国人男、女性待ち伏せ」(YOMIURI ONLINE])の記
 事が目に飛び込んできた。

 容疑は、「警告」後、ストーカー規制法2条1項1号「待ち伏せ」行為を被害女性の
 「勤務先」付近で行ったことであり、警戒中の兵庫県警葺合署員が発見し、ストーカー
 行為罪(同法13条1項)容疑で逮捕された。

 

 事件の概要はこうである。

 6年前、被害女性がアメリカに留学をした際、当該容疑者男性が被害女性と知り合う。

 容疑者男性は、被害女性が帰国後、facebookを通じて、メッセージをたびたび送信。

 今年2月来日し、滞在中に「会いたい」「連絡が欲しい」というメッセージを3回送信。

 その後、被害女性の勤務先付近で「待ち伏せ」をしていたところ、警戒中の警察署員に
 発見される。

 

  

 この事案を通じて、日々、当該SNS利用者として留意すべきことは、「居住地」「最寄
 駅」以外の「勤務先」「学校」などの外出先(同法に拠れば「~通常所在する場所」)
 についての具体的な個人情報について、その公開の是非について今一度の慎重な判断が
 要求されているということではないか。

 

 stalkをする者の多くが欲していることは、未成熟な「甘え」の心理に基づく相手方と
 の直接的な接触である。

 であれば、被害者に出会える確実性が高い場所、対象とする相手が社会人(一定の職種
 に限定されるが)の場合であれば、間違いなく「居住地」より「勤務先」であろう。

  

  なぜならば、社会人であれば、出勤退社時刻は一応定まっているし、「商号」や「屋号 
  」が同一の法人は限られたエリアではまず複数存在しえないという事情から、被害者
 の「居住地」よりも「勤務先」情報の方が「出会える」確実性が高いという点で、加害 
 者にとっては有益な情報であるということである。

 

  次に、facebookを通じて「メーセージ」を送信した場合、その内容によっては、
   同法2条1項各号のいずれかに該当する。(3号に該当するケースが多いであろう。)

  (但し、これだけでは認定されないのでご安心を。重要なのはこれを受けた相手方の気
  持ちである。後述する。)

  

 この事案では、容疑者男性の送信内容である「連絡がほしい」「会いたい」が、同法同
 条項3号「~義務のないことを行うことを要求する」に該当する。 

  

 そして、これらの回数が約10日間で計3回であることから、同法2条2項「反復して」
 したと認定。 

 

 更に、アメリカ在住の者が日本に来日したことから、滞在中の送信行為という行為事情
 から「不安を覚えさせる方法」も認定され、

  (記事からは明らかではないが、これ以前に被害女性は既に拒絶の意思を明白に示し
   ていたのであろう。

 にもかかわらず、被害女性の心情も顧みず来日し送信する行為は、通常、その身体の安
 全等にいかなる危害を加えられるかもしれないという不安を覚えさせる方法といえる

 であろう。)

  

 きっかけや当該回数や頻度を踏まえ、「反復されるおそれ」も認定され、警告書が交付
 されたのだと思われる。
 

 

 その後、被害者が処罰を求め「告訴」手続きを踏めば、更に「つきまとい等」の行為に
 出た容疑者は逮捕されることになる。(被害者が処罰をのぞまず、かかる手続きを踏ま
 なければ、公安委員会が禁止命令を下すことになる。)

 

 本事案では、容疑者が逮捕されるまでの間に、被害女性が「告訴」手続きを踏んだので
 あろう。

 

 本事件における被害女性の対処の仕方は、賢明であったといえるのではないであろうか。

  

  

 思うに、相手方の断り方にもよるが、

 たとえば、「迷惑」「不愉快」等の文言を用いて、相手方がこれ以上のアクションを望
 んでいないことを明確に表示してきた場合には、そこで潔くきっぱりと諦めるべきであ
 ろう。

  

 が、残念ながら、この道理は、弊職が若かりし頃に通用したものにすぎず、今となって
 は、過去の遺物なのであろう。

  

 一昔であれば、個人所有の携帯電話はなく、ましてや、メールなどもなく、初期の連絡
 手段は固定電話であり、加えて自宅でのプライベートな会話に制限が課されていたとい
 う事情から、会うまでにそれなりのプロセスを踏まざるを得ず、その過程で最低限の社
 会的人間性の素養が培われる環境が不可避的に存在していたといえる。

  

 社会の核家族化により社会的人間関係形成能力が養われる機会が減少し、過保護がもた
 らす一方的な依存的心理にとどまってしまっている相手との間で、自立した個我と個我
 との恋愛関係が構築されない状況のもとにあっては、「迷惑」「不愉快」等といった文
 言を用いて明らかに拒絶の意思を表示したにも拘わらず、依然として加害者が従前の行 
 動に固執してきた場合には、残念なことではあるが、迷わず一定の法的手続きに則った
 行動に出て然るべき時代になったのだと思われる。

   

 

 ちなみに、

 stalkをする者の「つきまとい」等の行為が、相手方以外の第三者に向けられた場合で
 あっても、一定の第三者との関係では、当該行為は「つきまとい等」に該当し、他の要
 件が充たされれば「ストーカー行為」と認定される。

  

 個々の事案によるが、具体的には、会社の上司、学校の先生、恋人、友人等 である。

  

 この場合には、行為を受けた第三者は比較的冷静な立場にいることから、

 被害者のためにも証拠の収集・保全に尽力されていただきたい。

  

  同法1条1項「~当該特定の者又はその配偶者、直系 若しくは 同居の親族

        

        の他当該特定の者と社会生活において密接な関係を有する者に対し、~」
            
                                Kenichi yoneda



         

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       

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