Stalker





2013年3月25著

 今週半ばに、警察庁から平成23年におけるストーカー事案等に関する認知件数等が
 発表された。

   

    

 2011年度 認知件数 1万4618件 (前年比9.6%減)

(平成20年度以降4年連続で1万4000件を超える高水準。)

  

【ストーカー規制法の適用(内訳)】

  警告                  1288件

  禁止命令等             55件

  仮の命令                0件

  警察本部長等の援助     2771件

  検挙(ストーカー行為罪)    197件

  検挙(禁止命令違反)        8件

 

【被害者の性別】

  女 性      89.7%

  男 性      10.3%

 

【被害者の年齢】 

  20代~40代 81.5%

 

【行為者の年齢】

  20代~50代 74.7%

 

 

【被害者と行為者との関係】

  配偶者(元・内縁を含む)         8.7%

  交際相手(元交際相手を含む) 53.0%

  知人・友人                   10.9%

  職場関係者                  8.9%

  面識なし                      5.5%

 

【行為形態別発生状況(複数計上)】

  1号 つきまとい・まちぶせ等     30.3%

  2号 監視していると告げる行為  4.3%

  3号 面会・交際の要求        29.6%

  4号 著しく粗野・乱暴な言動    11.6%

  5号 無言電話・連続電話      16.4%

  

 <平成23年3月22日警察庁

     平成23年中のストーカー事案及び配偶者からの暴力事案の対応状況について
  より抜粋>

 

 皆様も御存じのことではあるが、

 「いま、不審者が自宅に侵入しています」と通報すれば、現場に警察官が駆けつけ、
  侵入者が「(現行犯)逮捕」される余地がある。

  

 しかし、「ストーカー行為」(同法2条2項)と評価される前段階である「つきまと
 い等」に対しては、それが他の刑罰法令に抵触しない限りは、警察に対して「つきま
 とわれています、何とかしてください。」といっても、残念ながら、警察官は現場で
 加害者に職務質問等をするにとどまり、ストーカー容疑を理由に「逮捕」することは
 ない。

 

 なぜならば、「ストーカー行為等の規制等に関する法律」において、

 ある「行為」が「つきまとい等」+「相手方に不安を覚えさせる行為」と評価される
 にとどまる場合、つまり、「反復性」が認定されない段階においては、
 「警告」(4条)、「仮の命令」(5条)の対象になるにとどめているからである。

 

 これは、同法2条1項各号に掲げる行為は、これだけを取り上げれば、日常生活にお
 いて通常行われる行為といえ、悪質性もそれほど高くはなく、もし、これらの行為に
 犯罪構成要件該当性を認め、刑罰の対象にすれば、国民の行動の自由を不当に制限す
 ることに繋がるおそれがあるからである。

 

 また、「つきまとい等」+「相手方に不安を覚えさせる行為」が繰り返し行われてい
 たとしても、被害者が一切の証拠の収集・保全をせず、「告訴」等の法的手続きも踏
 まず放置していた場合、加害者が自ら吐露するといった等の事情がない限り、加害行
 為がエスカレートした段階で被害者が被害を訴えても、他の刑罰法令に抵触する行為
 でない限り、捜査機関が直ちに「ストーカー行為」と認定することも、ストーカー行
 為罪(同法13条1項)として「逮捕」することはないであろう。

 

 平成23年度の被害者と行為者との関係の約70%近くが、元交際相手等の顔見知り
 であることから、被害者がストーカー行為に対する認識を有しつつも、加害者に対す
 る「刑罰」をのぞまず、穏便な事態の収束を願っていたり、「報復」の危惧といった
 被害者の心情から、「警告」の申出(ストーカー規制法4条)にまで及ばないケース
 が少なくないのであろう。

       (警告書の交付件数1288/全認知件数14618件)

 

 

 しかし、「警告」について説明すると、

  「警告」の申出 →行為者への 「警告」書の交付

 これは、行政手続法における「行政指導」である。

 よって、「警告」は、当該行為者になんらかの義務を課したり、権利を制限する法的
 拘束力を有するものではなく、あくまでも、任意の自発的な中止を求めるものにとど
 まる。

 また、行政不服審査法の不服申し立てや、行政事件訴訟法の取消訴訟の対象にはなら
 ない。

 

 確かに、「警告」の申出を契機として、加害者のタイプによっては、終局的には刑罰
 が課される可能性は否めないであろう。

 つまり、「警告」書が交付され、その後、加害者が警告に違反し、公安委員会により
 「禁止命令」書が交付され、にもかかわらず、更に、「つきまとい等」にでた場合、

 行為者は、禁止命令等違反罪(同法14条、15条)で逮捕され、

 ケースによっては、起訴され、

  14条の場合 1年以下の懲役または100円以下の罰金

  15条の場合 50万円以下の罰金

 の範囲で処罰される可能性がある。

 

 ストーカー行為はやめてもらいたい、でも、処罰は望んでいないというように

 行為者に対する「警告」や「検挙」をのぞまないのであれば、

 まずは、口頭での指導警告を捜査機関に依頼すべきであろう。

 

 と同時に、
 同法7条1項に基づいて「被害防止交渉を行う場所として警察施設を利用」(同法施
 行規則第9条5号)し、第三者協力のもと、時間をかけて行為者を説得することに尽 
 力すべきであろう。

 

 もし、これら一連の措置を講じても、「つきまとい等」に執着する者に対しては、将
 来における自己の身の安全が脅かされるおそれがある以上、次ぎの防衛策として、
 「警告」の申出を行うべきであろう。

 

 

 一方で、元交際相手や友人知人以外の見知らぬ者との関係では、例えば、先週述べた
 SNSを通じて「会いたい」「付き合ってほしい」と執拗にメッセージを送信してくる、
 特に素性が明らかでないケースにおいては、不安を感じた時点で迷わず「警告」の申
 出をしておくべきであろう。

 

 

 とにかく、程度が自身の目から見て許容限度内のものであったとしても、加害者の行
 為がエスカレートした段階で初めて法的手続きに出た場合、捜査機関としては、それ
 までの経緯を即座に把握することは困難である以上、危機迫った状況にある被害者が
 望む安全確保に資する捜査対応を期待することは難しいと言えることから、念には念
 を入れ、「付きまとい等」に気づいた時点、又は、もはや打つ手はないと確信した時
 点で、躊躇することなく、住所地を管轄する警察署長にそれまでに収集保全した証拠
 とともに「警告申出書」を提出すべきことが賢明といえるであろう。

                  
                                                            Kenichi yoneda 

                




         

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       

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