Stalker




2012年4月1日著

 先週のノートでは、平成23年度におけるストーカー行為等の認知件数等に示された

 「警告」書の交付件数の僅少さについて述べた。

 今週は、ある行為が「ストーカー行為」(同法2条2項)と認定されるための要件とし
 て、「つきまとい等」と併せて要求される「反復してすること」(同法2条2項)につ
 いて述べる。

 

 まず、「ストーカー行為」とは、

     同一の者に対し、

  つきまとい等
     ( 前項第一号から第四号までに掲げる行為については、

      身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が

      著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)

     を反復してすること をいう。

 

 ここで問題となっていたのが「つきまとい等」「を反復してすること」の意義、

 つまり、反復してする行為とは、いかなる行為か、であった。

   

  

 同法施行当時(平成12年)に刊行された同法の逐条解説書などにおいては、
 以下のような説明がなされていた。

    

   「同法2条1項の特定の号に掲げられた行為」 を反復してすること

 

   

 しかし、平成17年11月25日において、

  最高裁判所は、ストーカー規制法2条2項の「ストーカー行為」の意義について、  

 

    「同条1項1号から8号までに掲げる「つきまとい等」のうち、
   いずれかの行為をすることを反復する為をいい、
   特定の行為あるいは特定の号に掲げられた行為を反復する場合に限るものでは

   ない」

  とした。

   

   

 たとえば、加害者から宅配便で花束が贈られてきたところ、不安を感じつつも受け取り
 を拒み無視していたところ、数日後、自宅玄関扉にツーショットの合成写真が貼られて
 いた場合、恐怖心を抱いた被害者は捜査機関に対して「ストーカー行為罪」で告訴がで
 きるか?

 

      <1つ目の行為>            <2つ目の行為>

   

    「花束を送付する行為」         「合成写真の貼付行為」

 

 上記に掲げた2つの行為には、同法2条1項における同一(特定の号)の構成要件該当
 性は認められない。

  

     「花束を送付する行為」=3号「義務のないことを行うことを要求」

    

     「合成写真の貼付行為」=7号「名誉を害する事項を知りえる状態に置く」

 

   

 ここで、前者の見解に立てば、「特定の号に掲げられた行為」が繰り返されていないの
 で、「反復性」は否定され、「ストーカー行為」とは認定されず、告訴はできないこと    になる。

 

 しかし、前掲の最高裁判所によれば、同法2条1項に掲げられている行為が繰り返され
 れば足り、

 つまり、繰り返された行為が同じ特定の号に該当する行為である必要はないので、

 「反復性」が肯定され、告訴は可能となる。

 

 付言すれば、第1行為については、宅配会社が投函した不在票を、第2行為については、
 扉に貼付されていた合成写真を現場写真・証人(家主・管理会社等)の確保とともに保
 全されておくべきであろう。

 

 昨日の午前中、某所で用事を済ませ戻ってきた東京駅構内において、明らかに新入社員
 の方々であろう集団をいくつも目にした。

     

 新年度となり、新天地で新生活を迎えられる若者達へのお願いとしては、学生の時分と
 は異なり、行動範囲が飛躍的に広がる中で様々な人との関係を築き上げられていく際、
 「仕事上のつきあい」にとどめるべき相手なのか、それとも自己のプライベートな領域
 への立ち入りを許容できる相手なのかをそれなりの時間をかけてじっくりと見極められ、
 自己の個人情報を適切にコントロールしていただきたいものである。

      

 特に、1人暮らしをはじめられることとなる女性におかれては、帰宅後の自宅での孤独
 感からSNS等の利用を通じて安易に自己の詳細な個人情報を公開されることのないよ
 う、御自身のプライベートな生活を充実させるべく、英会話・習い事等ミドルスパンで
 達成可能な目標を掲げられ、まずは「face to face」から人の輪が広がる
 契機を得る努力をされていただきたいものである。



                                                            Kenichi yoneda

                




         

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

       

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