2012年4月8日著




 「ストーカー行為」=「つきまとい等」 + 「反復してすること」



 


先週に引き続き、今週も「ストーカー行為」の意義のうち、


「つきまとい等」の構成要素の一つである「恋愛感情その他好意の感情」の意義

について、
説明することにする。

 

~「恋愛感情」~

硬派とは異質なカタブツと揶揄される弊職が説明することは烏滸がましい言葉であり、

皆様方が実感として御認識されている通り、特定の異性間に不可避的に芽生える

すばらしい感情である。

  


~「その他の好意の感情」~


恋愛感情以外の「好意の感情」とはなにか?

この文言の意義については、


「平成12年 参議院地方行政委員会 ストーカー行為規制法案についての審議録」
の一部を下記に引用する。

 


(引用文)


 『照屋寛徳君 さて、この目的犯なんですが、第2条の「その他の好意の感情」と

  いう構成要件ですね、なかなかわかりにくい抽象的な、恋愛感情とか怨恨の感情と

  いうのはまだ外形的にもよくわかるのでありますが、「その他の好意の感情」とい

  うのはどういったことを考えておられるんでしょうか。

 

   松村龍二君 私も法律家でありませんのであれですが、好意の感情とは、一般的には

  好きな気持ち、親愛感のことを言いますが、この法律においては、つきまとい等を
 
  規制するに当たりまして、恋愛感情その他の好意の感情を充足する目的等を存在要件

  としておりまして、その感情が充足され得るものであることが予定されていることか

  ら、単に一般的に好ましいと思う感情だけではなく、相手方がそれにこたえて何らか

  の行動をとってくれることを望むものを言うと考えられます。

 
 また、一例を、本当に一例だけでございますが申し上げますと、女優、あるいはテレ

  ビを見ておりましてその画面に載るニュースキャスター等に対するあこがれの感情な

  ど、恋愛感情には至らないものも好意の感情に該当し得るものと考えておるわけで

  あります。 』

           

  (「平成12年 参議院地方行政委員会 ストーカー行為規制法案についての審議録」
   より抜粋)

 

上記引用文から、


「その他の好意の感情」とは、


   単に一般的に好ましいと思う感情だけではなく、


   相手方がそれにこたえて何らかの行動をとってくれることを望むもの

   ということになる。

 

 
たとえば、DV被害を受け離婚をした女性が元夫である男性から「つきまとい等」

を受けていた場合、


「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」第10条1項2項に

 基づいて一定の手続きを踏むことによって加害配偶者に対する接近禁止命令に

 加えて電話等禁止命令の法的保護を受けることができる。

 



でば、DV被害を受け離婚をした女性の子供達が同様の被害を受け日常生活に支障

をきたしていた場合、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」

による法的保護を受けることはできるか?

    



残念ながら、同法による法的保護を受けることはできない。


なぜならば、同法が保護の対象としている被害者は、配偶者(内縁関係にある者)、

一定の離婚後の元配偶者(内縁関係にあった者)に限定されているからである。

 



次に、ストーカー規制法による法的保護を受けることはできないか?

 



社会学的意味等を除いて、法律上は「親子関係」が成立している以上、加害男性が

血縁関係にある子供達に対して「恋愛感情」を充足する目的を有していることは、

昨今の親子関係の多様化に鑑みればありえないことではないが、限りなくゼロに近い

といえるであろう。

 


一方で、親は我が子に対して字の如く「親愛感」を抱くものである。



そして、一緒に食事をしたいとか、電話連絡が欲しいなど、「なんらかの行動をとって

くれることを望んでいる」といえる場合には、「好意の感情」を充足する目的を有して

いる場合にあたるであろう。



よって、他の要件が充たされる場合、処罰を望むのであれば「ストーカー行為罪」で告訴

することはできる。

   

     



「ストーカー行為」にでる者の中でも、加害者が元配偶者・元恋人である場合、


彼らの真の意図は、我欲の充足、


換言すれば、この実質的本質は「さみしい」という感情の払拭にあるのである。

 


それゆえ、このケースの初期段階においては、


まずは、明確な拒絶の意思を表明することが何よりも重要であろう。

       


そして、その後においては、被害者が徹底した「不作為」(「ゼロ動」)を貫くこと

が重要であると思われる。


決して、僅かであっても、加害者に対する直接的所為に労力・時間・金銭を浪費して

はならないのである。

      

その恐怖心・憤り・同情心から加害者に対する直接的なアクションを思案しがちである

のは十分理解できる。


しかし、言葉でいうほど心情的に容易なことではないのは重々承知ではあるが、


周囲、特に公的機関の助力を得ながら(事実を認識している第三者の数を増やすこと

に努める)、
ご自身に無関心を貫徹していただくことが有効な対策の第一歩であろう。



                                               Kenichi yoneda

                

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