2012年4月15日著

 

 今週末において、以下の事件が報道された。(YOMIURU ONLINE)


 「無職の男性(44)が復縁を執拗に迫った元交際相手の女性の居所が不明となり、


  その母親に脅迫メールを送りつけたとして、警視庁小平署がこの男性を脅迫容疑で逮捕した。」



      

事件の概要はこうである。


    


2011年 秋  別れた後も元交際女性の自宅の周辺をうろついていた。

          被害女性の母親が娘のストーカー被害を同署に相談した。


2011年10月 この男性にストーカー規制法に基づく「警告」を1回した。

          女性と連絡が取れなくなり、その母親への嫌がらせがはじまった。


2012年4月  元交際相手の女性の母親あてに「呪う」「人殺し」と繰り返し書いたメールを

          送るなどのストーカー行為を繰り返した。

          同署は放置すれば女性の家族に危害が及ぶおそれがあると判断し、

          脅迫容疑で逮捕した。




 この事件を通じて学ぶべきことは、「つきまとい等」が繰り返されはじめた初期の段階で、


 本人またはその親等がストーカー行為の事実の申告及びその相談をしに


 警察署等の捜査機関に足を運ぶことが重要であるということであろう。

      


 また、前回も述べたように、捜査機関の迅速な対応を期待するのであれば、


 被害者本人自身で解決を図ろうとせず、両親や兄弟姉妹、気のおけない友人など


 第三者の協力を初期の段階から得ることが重要であるということである。



           


 そして、被害事実を認識している第三者の数を増やすことにも努めるべきであろう。


 ただし、その際、くれぐれも、被害者自身の居場所・連絡先等加害者が欲する個人情報の

 扱いには慎重なられ、ごく少人数にとどめ、被害者への連絡手段として、親・信頼のおけ 

 る友人に情報提供・連絡の受け付け役を担ってもらうことが被害の未然予防としては効果 

 的であるといえるであろう。

 


 長崎ストーカー事件がクローズアップされて間もないこの時期ということもあり、


 明らかに脅迫罪の構成要件に該当する「告知」内容が含まれていたのであれば、


 「メールだから…」「突如、眼前に出現したわけでもない…」ということで、安易に放置せず、


 捜査機関の手厚い迅速な保護を受けるべく、まずは問題となっているメールを信頼のおける

 友人等に転送し、証拠の保全を徹底され、と同時に、適切な時期に犯罪事実を詳細に把握

 している信頼のおける第三者ともに、現時点でストーカー事案に対して積極的な捜査機関

 に足を運ぶべきであろう。





 一方で、加害者が元配偶者・元交際相手である場合、

 「元カレが犯罪的行為に及んでいる?」とは恥ずかしくて口にできないという心情が第三者

 へ協力を求める意識の形成を阻害する要因となっていることが少なくないであろう。


           


 しかし、この情報過多の時代においては、ストーカー的資質の有無の見極めがより困難にな

 っていることは否めないであろう。

    


 すなわち、「言葉」が先行し、その「言葉」を裏付ける「行動」が伴わず、「言葉」が「言葉」

 により愚弄される結果、知らず知らずのうちに御自身の真意そのものが歪曲化されていき、

 その乖離が解決に長期を要する問題となって顕在化したときに初めてそのことに気づくの

 だと思われることから、PDCAではないが、中間プロセスで必須の「慮る」という極めて体

 力と時間を要する姿勢をとれないという現実があるのであろう。

 


 カタブツの弊職がいえることではないが、


 「言葉」も大切であるが、それ以上に「心からの行い」に勝るものはない。


 最近では、めっきり耳にしなくなった



       

      「不言実行」



    


 それに代りつつある「有言実行」、悪くはない響きではある。 



    「言うは易し、行うは難し」



   


 弊職自身、日々苦戦を強いられている言葉である。


 


 それ故、「見抜くことができなかった」ことを後悔するにとどめるのではなく、


 反省材料と位置づけ、早期に捜査機関からの円滑・迅速な助力を得られるべく、


 その契機及び相手の特異な資質を御自身なりに分析され、第三者の協力の下、


 捜査機関と一体となって事態の早期収束に努められて頂きたいと思う。


 とはいえ、ストーカー被害者の立場に陥らぬための礎があるに越したことはないであろう。

 

 先般、JASRACのシンポジウムに参加した際、ここ数年でSNS等の双方向性を有するコ

 ミュニティ手段が普遍化しつつある中においても、1世帯当たりのテレビの平均視聴時間が

 ここ数年変わらず約2時間であるというリサーチ結果が報告された。


 その理由は、SNSはあくまでも当事者同士のコミュニケーションの道具(中身ではなく箱

 物)にすぎず、その題材(箱の内容物)を提供する存在として、テレビが不可欠なファクタ

 ーになっているというのである。なるほど…。

 

 このSNSとテレビとの関連性から、


 前回まで、facebookのマイナス要素ばかりを取り上げてきたが、


 このレベルにおいては、facebookをストーカー被害者とならぬための未然防止に資する

 判断材料を提供する有益なプラットホームに位置付けることは可能であろう。


   


 つまり、交際以前の段階で、相手方のSNS等の利用状況を把握し、


 たとえば、facebookの登録利用者であれば、その「友達の数」や「ウォールの公開の有無

 」等を確認することで、日常生活における友人等とのコミュニケーション機会・頻度に照ら

 し、独身生活状況下で自身でどの程度の我欲の充足(「さみしさ」の払拭)を図っているの

 かを把握され、御自身にとって特別な存在となりうるに相応しい異性(相手)であるかを見

 極められる1つの判断材料を提供してくれるツールとしての利用価値は低くはないといえる

 のではないであろうか。


                                               Kenichi yoneda

                

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